中性脂肪・コレステロールは男女で変わり目が違う?10万人超の研究

中性脂肪やコレステロールの「変わり目」は、男女で違うのでしょうか。中国の10万人超の健診データを調べた研究では、男性は35〜45歳、女性は55〜65歳に、代謝指標の大きな変化が見られたと研究機関が発表しています。

年齢とともに、自分の健診の数字はどう変わっているのか。科学誌Nature Agingに掲載された「加齢時計」の研究は、過去の結果票を見返すきっかけになりそうです。今回の年齢は集団の特徴で、一人ひとりの変わり目を決める数字ではありません。

10万人超・172項目の健診データで作った「男女別の加齢時計」

研究の対象は、中国の3つの医療施設(北京・南昌・衢州)で検査を受けた18〜98歳の人たちです。人数は論文では「10万人超」、著者が所属する中国科学院の発表では104,208人とされています。

使ったのは、健康診断や病院の検査でふだん測っている172種類の臨床指標です。血液検査の値やBMI(体重と身長から出す体格の指数)などがここに入ります。

研究者はこの数値の組み合わせから、「加齢時計」を男女別に作りました。加齢時計とは、検査の値から「体の年齢」を推定する計算の仕組みのことです。推定した年齢と実際の年齢の差を見ることで、年齢のわりに体の状態がどうかを比べられるようにしています。

ヒトのデータは、ある時点で、さまざまな年齢の人を比べた横断研究です。同じ人を何年も追いかけて、数値の変化を記録したものではありません。

あわせて、人の血管の内側の細胞(培養した細胞)を使った実験と、マウスの実験も行われています。

分かったこと:数値の「変わり目」は男女でずれていた

男性35〜45歳、女性55〜65歳に見られた代謝の変化

論文の要旨では、男女の加齢の進み方は中年期に分かれ、高齢になると近づいていく、と報告されています。

中国科学院の発表では、もう少し具体的に書かれています。

  • 男性:35〜45歳に、BMI・中性脂肪・コレステロールを含む代謝の大きな変わり目
  • 女性:55〜65歳に変わり目。ホルモンなど内分泌の変化とともに、脂質の数値が悪い方向へ
  • 高齢になると、男女の差はおおむね小さくなる

この年齢区分は中国科学院の発表によるものです。女性の閉経年齢や、健診を始める年齢の基準を示す数字ではありません。

中国の研究集団で見られた代謝指標の変化の時期。男性35〜45歳、女性55〜65歳という区分は中国科学院の発表による
図:中国の研究集団で見られた男女の代謝の変わり目(中国科学院の発表をもとに作成。年齢区分は個人の変化を予測するものではありません)

年齢とともに積み上がっていた数値

年齢とともに積み上がっていた(蓄積していた)と報告されたのは、次のような数値です。

  • 代謝の指標:LDL(いわゆる悪玉コレステロール)、中性脂肪、血糖、尿酸
  • 腫瘍マーカーの一部:CEA、HE4(腫瘍マーカーは、血液で測る物質のうち、がんがあると高くなることがあるもの)

研究機関の発表では、これらは体の年齢が進んでいることとも関連していた、とされています。

「男性の方が老化が速い」という結果ではなかった

男女で変わり目の時期が違うと聞くと、「どちらかが早く老ける」と受け取りたくなります。

ただ、推定年齢と実年齢の差を男女で比べた解析(女性15,863人・男性15,416人)では、条件をそろえて調整したあと、男女で有意な差はありませんでした。違ったのは、変わり始める時期と、変わる中身です。

細胞とマウスで試したこと

研究者は、年齢とともに積み上がっていた数値が、老化の「結果」なのか、老化を進める側にも関わっているのかを、人以外で確かめています。

  • 培養した血管の細胞に、LDL・血糖・尿酸・CEA・HE4 を加えると、老化に似た変化が起きた(1群3〜6回の反復実験など)
  • 高い血糖で起きた細胞の変化は、糖尿病の薬のメトホルミンを一緒に加えると和らいだ
  • 高脂肪の餌を与えたマウスを普通の餌に戻すと、肝臓の老化に関係するいくつかの特徴に変化が見られた

研究者はこれをもとに、代謝の数値と腫瘍マーカーの積み上がりを「人の老化の、手を打てる要因」と表現しています。

この研究で、まだ言えないこと

人の健診データから見られた傾向と、細胞・マウスで試した仕組みを分けると、この研究の発見を理解しやすくなります。

  • 人の部分は横断研究:ある時点で年齢の違う人を比べたもので、同じ人の数値が年齢とともにどう動いたかを見たものではありません。「この数値を下げれば老化が戻る」「寿命が延びる」という因果関係は、人では確かめられていません。
  • 原因として試したのは細胞とマウスだけ:人が数値を下げたときに体の年齢が変わるかを調べた研究ではありません。メトホルミンの結果も培養細胞でのことで、薬を飲む理由になるものではありません。
  • 検証は中国の3施設の中だけ:公開されている範囲では、別の国や別の集団で同じ結果になるかの確認は見当たりません。
  • 病気との関連は人数が少ない:動脈硬化や骨粗しょう症などとの関連も調べていますが、病気のある人は1つの病気あたり42〜410人でした。

自分の健診結果を見るときの、ひとつの目安として

この研究を生活に置き換えるなら、使いどころは「健診の数字をどの年代で、どの項目から見ていくか」です。

この研究は一人ひとりの推移を追ったものではありません。それでも、年齢とともに積み上がっていた項目と、男女で変わり目の時期が違うことは示されました。1年分の結果だけで「少し高いけど、まあいいか」と済ませず、自分の数字を何年分か並べて見るきっかけにはなります。

  • 男性:BMI・中性脂肪・コレステロールの推移。研究で変化が見られた30代後半〜40代も、見返す視点の一つに
  • 女性:LDLや中性脂肪などの脂質が、年ごとにどう変わっているか。55〜65歳まで確認を待つ必要はありません
  • 男女とも:血糖と尿酸も、年齢とともに積み上がっていた項目として一緒に

ただ、どこからが高いのか、何か対処が必要なのかは、この研究からは決められません。気になる数値がある場合は、健診を受けた医療機関や、かかりつけの医師に相談してください。

手元に過去の結果票があれば、次の健診の結果が届いたときに、中性脂肪・LDL・血糖・尿酸の4つだけでも何年分か横に並べて書き出してみてください。上がり始めた年が見えれば、医師に相談するときにもそのまま伝えられます。

食事と体の年齢の研究も気になる方は、健康的な食事とDNAから推定する老化の指標を調べた研究もご覧ください。日々の食べ方と健診の記録を、暮らしを考える手がかりにできます。

出典:Li J, et al. Sex-specific aging clocks from a large-scale human phenome reveal distinct aging transitions and circulating signatures. Nature Aging(2026)/中国科学院の発表「Clinical Aging Clocks Reveal Sex-Specific Aging Transitions and Metabolic Drivers」

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。感じ方には個人差があります。