健康的な食事は“老化のスピード”と関係する?6,470人のDNA研究から言えること・言えないこと

体にいい食事を続けていると、老け方もゆっくりになるのか。

気になる方もいると思います。では、食事と“老化の目印”の関係は、研究ではどこまで分かっているのか。ドイツの大規模な研究が、国際的な学術誌 Nature Communications に掲載されたので、読んでみました。

先に結論めいたことを言うと、「健康的な食べ方をしている人ほど、DNAから測る老化の目印が若い側に出ていた」という関連は、別の集団でも同じ方向に出ています。ただし「この食事で若返る」と言える研究ではありません。どこまでが言えて、どこからが言えないのかを分けて見ていきます。

「老化の目印」はDNAの“印”から計算される

この研究で使われた老化の目印は、DNAメチル化という情報をもとに計算されます。DNAに付いている小さな“印”(メチル化)のパターンから、「実際の年齢と比べて老化が進んでいるか」「老化がどのくらいの速さで進んでいるか」を推定する指標で、エピジェネティッククロック(老化時計)と呼ばれます。

研究では次の3つが使われました。

  • GrimAge(グリムエイジ)とPhenoAge(フェノエイジ):実際の年齢と比べて、印から推定した年齢がどれだけ進んでいるか
  • DunedinPACE(ダニーデンペース):その時点で老化がどのくらいの速さで進んでいるか

大事なのは、これらはあくまで「目印(バイオマーカー)」で、寿命そのものではないということです。目印が若い側に出たからといって、その人が長生きするとか、病気にならないということにはなりません。

6,470人の食事と老化の目印を照らし合わせた研究

研究の対象は、ドイツの地域住民を対象にした「Rhineland Study(ラインラント研究)」の参加者6,470人です。さらに、別の集団「EPIC-Potsdam(エピック・ポツダム研究)」の1,034人で、同じ傾向が出るかを確かめています(再現解析)。

  • 食事:食事内容の質問票(ふだん何をどのくらい食べているか)から、地中海食・DASH・MIND・北欧食(Nordic)・AHEI・植物性中心の食事などの「食事スコア」を10種類計算
  • 老化の目印:DNAメチル化から、上の3つの指標を計算
  • 研究の型:ある一時点の食事と目印を比べる「横断観察研究」

食事スコアは、それぞれの食事法の考え方にどれだけ近い食べ方をしているかを点数にしたものです。中には「炎症を起こしやすい食事かどうか」を表すスコア(DII)も含まれています。

結果:10種類の食事スコアのどれもが、老化の速さの目印と関連していた

結果の要点は3つです。

  • 10種類の食事スコアのすべてが、老化の速さの目印(DunedinPACE)と関連していました(多くの比較をしたことによる偶然を補正したあとでも)。
  • 3つの目印すべてと一貫して関連したのは、DASHと北欧食(Nordic)のスコアでした。
  • 炎症を起こしやすい食事のスコア(DII)が高い人では、PhenoAgeとDunedinPACEが高い方向、つまり老化の目印が進んだ側に出ていました。

別の集団(1,034人)でも、関連の方向と大きさはおおむね同じでした。1つの集団だけの偶然ではなさそう、というのがこの研究の強みです。

数字の大きさは「小さい」

ここは誤解しやすいところです。DASHスコアが1SD(この研究では4.4点)高い人では、

  • GrimAgeの進み:−0.03SD
  • PhenoAgeの進み:−0.03SD
  • DunedinPACE(老化の速さ):−0.10SD

という差でした。SD(標準偏差)は「集団の中でのばらつきの幅」を単位にした目盛りです。−0.10SDは、ばらつきの幅の1割ほど低い側にずれる、という意味で、効果の大きさとしては小さいものです。「老化のスピードが10%下がる」という意味ではありません。数字だけを見て「食事で老化速度を何割下げられる」と受け取るのは、この研究からは言えないことです。

この研究で、まだ分からないこと

著者たちも、「食事が老化を遅らせる」と断定できる設計ではないとしています。主な理由はこうです。

  • 一時点の比較(横断研究)なので、食事を変えたら目印が変わるのか、病気や寿命が変わるのかは確かめていない
  • 食事は質問票で答えたもので、思い出し方などによる誤差がある
  • 健康的な食事をする人は、ほかの生活習慣も違う可能性があり、調整しきれていない要因(残余交絡)が残る
  • 対象は主にドイツの欧州系の人たちで、日本の食生活にそのまま当てはまるかは分からない
  • 再現に使った集団の食事データは1990年代のもの

なお、資金はドイツの公的な研究機関などから出ていて、資金提供者は研究の設計や解析に関わっていないこと、著者に利益相反が無いことも記載されています。

生活の中でどう受け止めればいいか

この研究から生活に持ち帰れることは、次の2つだと考えています。

「正解の食事法を1つ探す」より、続けられる健康的な食べ方を選ぶ

10種類の食事スコアのどれもが老化の速さの目印と関連していました。しかも研究では、10のスコアのどれでも上位25%に入る人の重なりはわずかでした。つまり、ある食事法で高い点になる人が、別の食事法でも高い点になるとは限らない、ということです。

「地中海食でなければ」「北欧食でなければ」と1つに絞り込むより、どれかの健康的な食べ方の考え方に、自分が無理なく続けられる範囲で近づける。この研究の結果からは、そう読むのが自然だと思います。

「老化時計で若返り」をうたう商品を見たときの判断材料にする

この研究は、食事のパターンと老化の目印の観察上の関連を調べたもので、特定の食品やサプリメントの効果を確かめたものではありません。「研究で老化が遅くなると分かった」という広告を見かけたら、それが食事全体のパターンの話なのか、介入して変化を確かめた研究なのか、目印の話なのか寿命の話なのか、を一度確かめてみてください。

ちなみに、この研究はアーシングとは関係のない、健康一般の研究です。こうした生活の研究も、言えることと言えないことを分けて紹介していきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。感じ方には個人差があります。

出典:Nature Communications 掲載論文(Rhineland Study/EPIC-Potsdam) https://www.nature.com/articles/s41467-026-77064-4