
運動を続けても、予想したほど体重が減らない。そんな「体重代償」と、炎症の目安である血液検査の値CRPとの関係を、124人のデータで調べた研究があります。
運動した人の中では、予測どおりかそれ以上に体重が減った人のほうが、予測ほど減らなかった人よりCRPの低下が大きい結果でした。一方、運動群全体と運動しない群との比較では、CRPの変化に有意な差はありませんでした。
体重代償は、食べ過ぎと同じ意味ではありません。体重の変化と食事量を分けて見ると、運動と食事を一緒に考えるヒントが見えてきます。
4か月の運動実験では、運動したグループ全体のCRPに差は出なかった
もとになっているのは、INFLAMEという試験です。座って過ごす時間が長く、CRPが高めの大人162人を、運動するグループとしないグループに無作為に分けて、4か月間比べました。
- 今回の解析の対象:試験を完了し、CRPの測定値などの解析条件を満たした124人(運動グループ60人、運動しないグループ64人。運動群では消費エネルギーのデータも必要)
- 年齢:30〜75歳、平均50.8歳
- 運動の量:1週間で「体重1kgあたり16kcal」を消費する有酸素運動を、指導者のもとで行う(体重60kgの人なら1週間で960kcal)
- 運動の強さ:最高酸素摂取量(体が取り込める酸素の量の最高値)の60〜80%にあたる心拍数の範囲
結果、運動グループ全体と運動しないグループの間で、CRPの下がり方に統計的な差はありませんでした。腹囲、内臓脂肪、皮下脂肪も同じで、どれも差は確認されていません(いずれもP≥0.063)。
つまり、この試験から「4か月運動すればCRPが下がる」とは言えません。今回の論文は、その結果を踏まえたうえで、運動グループの中身をもう一度分けて見直したもの(事後解析)です。
予測どおりに体重が減った人は、CRPの低下も大きかった
研究チームが注目したのは「体重代償」です。運動で使ったエネルギーから計算すると、本来これくらい体重が減るはずという量があります。実際の減り方がそれより小さかった分を、体重代償と呼んでいます。体重代償のある人全員が食事量を増やしていたと確認されたわけではありません。摂取エネルギーの変化とCRPの関連は、下の3つ目の解析で別に調べられています。
- 体重代償は、運動グループで1.3kg、運動しないグループで0.1kgでした(P=0.029)。
- 運動グループの中で、代償しなかった人は、代償した人より、CRPの下がり方が1.2 mg/L大きくなっていました(P=0.016)。
- 1日に食べるエネルギーが100kcal増えるごとに、CRPの変化が+0.1 mg/L、つまり下がりにくい方向に関連していました(P=0.022)。
いずれも統計的に有意な差や関連でした。ただし、体重代償の有無や食事量で分けた比較は、無作為に割り付けた比較ではありません。
摂取エネルギーが増えた人ほどCRPが下がりにくいという関連はありましたが、食事量の違いがCRPの違いを生んだと確定した結果ではありません。
この結果を読むときに気をつけたいこと
- 事後解析です。試験を始める前に決めていた比べ方ではなく、あとから分けて見た結果です。
- 「食べなければ運動でCRPが下がる」とは言えません。運動そのものが炎症を抑える、ということをこの解析だけで証明したわけでもありません。
- 期間は4か月と短めです。もっと長く続けた場合のことは分かりません。
- 参加者は女性と白人が多い集団です。ほかの集団で同じ結果になるかは確かめられていません。
- 食事は本人の申告、活動量は歩数計で測っています。食べた量の記録には、ずれが入る可能性があります。
- CRP以外の炎症の指標は、十分に測られていません。
同じことが、最初から計画した介入研究でも確かめられるかは、これからの課題です。
運動と食事を一緒に記録すると、自分の変化が見えやすい
この研究から生活に持ち帰れるのは、「運動したかどうか」だけでなく「運動した分をどう食べたか」も、体の数値と関わっているかもしれない、という見方だと思います。
研究の運動量を自分に当てはめると、体重60kgの人なら1週間で960kcal、70kgの人なら1,120kcalを運動で使う計算です。自分の運動がこれより多いか少ないかは、比べるときの目安になります。
次に運動を続ける1週間で、運動した日としなかった日に、何をどれくらい食べたかを簡単にメモして比べてみてください。量を無理に減らすためではなく、自分の運動と食事の関係を知るためです。比べるときは、たとえばこんなところを見ると違いが分かりやすくなります。
- 運動した日だけ、間食や飲み物が増えていないか
- 運動のあとの食事の量が、しない日と比べてどうか
運動量、食事、体重の変化を並べておくと、自分の生活を見直すときや、医師・管理栄養士に相談するときの材料になります。食事記録だけで栄養が足りているかやCRPの原因は判断できないため、血液検査の数値が気になる方は医療機関に相談してください。
運動と食事の組み合わせについては、運動に食品の質の栄養指導を加え、血糖の変化を調べた研究も紹介しています。
出典:Dorling JL ほか(2026)「Exercise-induced compensation and C-reactive protein change in adults with elevated C-reactive protein: analysis of a randomised controlled trial」European Journal of Applied Physiology. DOI: 10.1007/s00421-026-06405-4.
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。感じ方には個人差があります。
著者:古川鉄兵(アーシング研究家/riraku-life 代表)
