
血圧の薬を飲みながら、ウォーキングも続けている。それでも、健康診断の血糖の数字が気になる。
運動をしているなら、食事は今のままでいいのでしょうか。それとも、食べ物の見直しまで足した方が違いが出るのでしょうか。
この疑問に近い形で、運動だけのグループと、運動に「食べ物の質」の栄養指導を足したグループを12週間比べた研究が、ブラジルから報告されています。結果は、血糖と血圧で分けて読む必要がありました。
血圧の薬を飲んでいる50〜80歳の32人を、2つのグループに分けた研究
対象は、医師から原発性高血圧(はっきりした原因の病気がない高血圧)と診断され、降圧薬を1〜4種類使っている50〜80歳の32人です。リオグランデ・ド・スル連邦大学の地域プログラムで行われ、参加者はくじ引きのように無作為に2つのグループに分けられました(ランダム化比較試験)。
- 運動だけのグループ(16人):屋外の陸上トラックで、ウォーキングやジョギングと、自分の体重を使う筋力運動を、1回60分・週2回
- 運動+栄養指導のグループ(16人):同じ運動に加えて、ブラジルの食事ガイドラインにもとづく栄養指導を隔週で計6回
栄養指導の中身は「食品の質を上げる」「超加工食品を減らす」というもので、カロリー制限はありません。超加工食品とは、一般に、スナック菓子や甘い飲み物、菓子パン、インスタント食品のように、工場で何段階も加工されて作られる食品のことです。食べる量を減らすダイエット指導ではなく、何を食べるかの指導だった、という点がこの研究の特徴です。
参加者は、血圧は収縮期(上の血圧)で約129 mmHgと薬で比較的落ち着いていた一方、空腹時血糖は前糖尿病域(糖尿病の手前とされる範囲)でした。主に調べたのは空腹時血糖で、8〜12時間絶食した状態で、Accu-Chek(簡易血糖測定器)を使って毛細血管の血で測っています。
空腹時血糖は、運動だけのグループより10 mg/dL低かった
血糖:差が出たのは「グループ同士の比較」
12週間後の空腹時血糖は、運動+栄養指導のグループが、運動だけのグループより10 mg/dL低い結果でした。この差は統計的にも意味のある差とされています(P=0.004。P値は、小さいほど偶然の差とは考えにくいことを示す目安です)。
中身を見ると、運動+栄養指導のグループでは血糖が下がっていた(P=0.016)のに対し、運動だけのグループでは、むしろ上がっていました(P=0.040)。10 mg/dLは「片方のグループが10下がった」という意味ではなく、12週間後の2つのグループの差です。

血圧:約10 mmHg下がったのは「片方のグループの中」の変化
収縮期血圧は、運動+栄養指導のグループの中で約10 mmHg下がっていました(P=0.034)。ただ、運動だけのグループと比べた差は、統計的に意味のある差になりませんでした(P=0.220)。
変わらなかったもの
拡張期血圧(下の血圧)、体組成、心肺の体力は、グループの中でも、グループ同士の比較でも、差は見られませんでした。32人のうち29人が最後まで参加し、途中でやめた人も含めて解析しています(ITT解析)。重い有害事象(研究中に起きた体の不調などの好ましくない出来事)はありませんでした。
この研究で、まだ言えないこと
結果を自分の生活に当てはめる前に、この研究の範囲を確認しておきます。注意点はここにまとめます。
- 人数が32人と少なく、期間は12週間。長い目で見て糖尿病や心臓・血管の病気が減るかは調べていません。
- 公的な臨床試験の登録をしていない研究です。
- 血圧などの副次的な項目は、差を見つけるには人数が足りなかった可能性があると、著者自身が書いています。血圧の結果は探索的なものという位置づけです。
- 血糖は、長い期間の平均を反映するHbA1cではなく、毛細血管の血で測った空腹時血糖を用いており、変動が大きい可能性があると、著者自身が書いています。
- 実際に食事の中身がどれだけ変わったかは、数字で測っていません。参加者がもともとどれくらい食事の知識を持っていたかも評価していません。
- 運動の負荷は、12週間で段階的に上げていません。
- 参加者と運動指導者は、自分がどちらのグループかを知っていました(評価する人と解析する人は知らない形)。
- ブラジルの50〜80歳の結果で、日本人など別の集団でも同じになるかは分かっていません。
この1本で「運動より食事の方が大事」「栄養指導で血圧が10 mmHg下がる」と言える研究ではありません。言えるのは、この条件の32人では、運動に食べ物の質の指導を足したグループの方が、12週間後の空腹時血糖が低かった、というところまでです。
運動を続けている人が、食事で見直せること
この研究では、週2回・60分の運動をした運動だけのグループで、空腹時血糖がむしろ上がっていました(P=0.040)。「運動をしているから食事はそのままで大丈夫か」を、自分でも確かめてみるきっかけにできます。
自分に近いかどうかは、研究の参加者の条件と比べて、次の点で見てみてください。
- 血圧の薬を飲んでいて、血圧は比較的落ち着いている
- 50〜80歳くらい
- 健康診断で、空腹時血糖が糖尿病の手前の範囲と言われたことがある(研究の参加者は前糖尿病域の人たちです。糖尿病と診断されて治療中の人は、この条件とは違います)
- 今している運動が、研究と同じくらいの量か(研究では、ウォーキングやジョギングと、自分の体重を使う筋力運動を、1回60分・週2回)
- 運動をこれから始めるところか、すでに続けているか(自分がどちらかを書き出しておくと、相談のときに伝えやすくなります)
当てはまる場合でも、研究で足したのは「カロリーを減らすこと」ではなく、「加工の多い食品を減らし、食品の質を上げる」指導を、隔週で6回受けることでした。たとえば、間食のスナック菓子や甘い飲み物、朝の菓子パンのように、超加工食品がどこに入っているかを書き出してみるのは、すぐにできる確認です。
また、血圧や血糖の薬を飲んでいる方は、食事を見直すときも薬の量を自分で変えないでください。数値の判断や薬の調整は、主治医の領分です。
次の受診や保健指導で、聞いてみること
この研究の形に近いことを試したい場合は、次の受診や健康診断後の保健指導のときに、「運動は続けているので、食べ物の質や加工食品の減らし方について、栄養の相談を受けられますか」と聞いてみてください。研究で足した栄養指導は、次の形でした。相談するときに、この形を伝える材料にできます。
- 回数:隔週で計6回(12週間)
- 中身:ブラジルの食事ガイドラインにもとづき、食品の質を上げ、超加工食品を減らす
- カロリー制限:なし
- 相談先で確かめたいこと:1回の時間や、個別かグループかなど、受けられる指導の形
病院の栄養相談や、自治体の保健指導・栄養相談で受けられる場合があります。
そのうえで、次の健康診断の空腹時血糖を前回の数字と並べてみる。その間に見直した食事の内容も一緒にメモしておき、次の受診で主治医に見せてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。感じ方には個人差があります。
