睡眠時無呼吸は血液検査で分かる?180人の研究と今の検査方法

血液から睡眠時無呼吸の手がかりを見つけようとする研究が進んでいます。いびきで検査を受けた成人180人を調べた研究では、閉塞性睡眠時無呼吸がある人の血液中で、sLRP-1という指標が低い傾向が見られました。

将来の検査につながるかもしれない発見ですが、現時点で血液検査だけで診断できると示したものではありません。「いびきが大きい」「寝ている間に息が止まる」と言われた方に向けて、研究のポイントと今受けられる検査を紹介します。

いびきで検査を受けた180人を、無呼吸の有無で比べた研究

対象は、いびきを主な訴えとして「PSG」を受けた成人180人です。PSG(睡眠ポリグラフ検査)は、一晩眠りながら呼吸や血液中の酸素、脳波などを同時に記録する検査です。

この検査で、1時間あたりに呼吸が止まったり弱くなったりした回数(AHI)が5回以上の人を「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)あり」、5回未満の人を「なし」として分けました。OSAは、眠っている間にのどの空気の通り道がふさがって、呼吸が止まったり浅くなったりする状態です。

  • OSAあり:100人(AHIが1時間に5回以上)
  • OSAなし:80人(AHIが1時間に5回未満)

ここで押さえておきたいのは、「なし」の80人も、いびきで受診してPSGを受けた人だということです。いびきのない一般の人と比べた研究ではありません。

sLRP-1は、細胞表面のLRP-1というたんぱく質の一部が切り離され、血液中に溶け出た形のものです。そのうえで、血液(血清)中のsLRP-1の量を「ELISA」という方法で測りました。ELISAは、抗体を使って血液中の特定のたんぱく質の量を測る方法です。測った値とOSAの有無の関係を統計で調べ、さらに5種類の機械学習のモデルで「OSAありとなしをどのくらい見分けられるか」も試しています。

研究の形は、一つの医療施設で行われた「症例対照研究(case-control研究)」です。病気のある人とない人を集めて、その時点の特徴を比べる方法です。研究費の提供はなく、著者全員が利益相反なしと申告しています。

無呼吸があった人では、sLRP-1が低かった

結果は大きく3つです。

  1. 値そのものの差:sLRP-1の中央値(低い順に並べたときの真ん中の値)は、OSAありの群で6.5 pg/mL、なしの群で11.0 pg/mLでした。pg/mL(ピコグラム毎ミリリットル)は、血液1ミリリットルにごく微量含まれる量を表す単位です。この差は偶然とは考えにくい水準(P<0.001)でした。
  2. ほかの条件を差し引いても関連が残った:ほかの要因の影響をできるだけ差し引いて計算したモデルで、オッズ比(OR)は0.34(95%信頼区間0.30〜0.55、P<0.001)でした。オッズ比は、ある値とその病気がある見込みとの関係を表す数字で、1より小さいと「その値が高いと、病気がある見込みが低くなる」方向の関連を表します。この数値は論文本文の記載です。要旨ではOR=0.35、95%信頼区間0.22〜0.56と記され、本文とは推定値・信頼区間に違いがあります。
  3. 機械学習での見分け:sLRP-1に加えてBMIや血液検査の値など複数の指標を使った5種類のモデルのうち、ナイーブベイズという手法のモデルで、見分ける力の指標AUCが0.94でした。sLRP-1単独の血液検査の成績ではありません。AUCは1に近いほどよく見分けられ、0.5だと当てずっぽうと同じ、という目安の数字です。

まとめると、「いびきで受診した人の中では、sLRP-1が低いこととOSAがあることの間に強い関連が見られた」というのが、この研究で分かったことです。

AUC 0.94は何を表す?新しい検査のニュースを読むポイント

AUC 0.94という数字だけを見ると「94%当たる血液検査ができた」と読みたくなりますが、そうは言えません。理由を4つの確認点に分けます。ほかの「血液で〇〇が分かる」というニュースを読むときにも、そのまま使える見方です。

血液検査の研究を読む4つの確認点。内部検証・対象者・因果関係・測定方法

1. その成績は、同じ人たちの中で出したものか

AUC 0.94は、同じ180人のデータを5つに分け、4つで学習して残り1つで試す、を5回繰り返す方法(5分割交差検証)で出した、研究内部の成績です。別の病院や別の人たちで同じように見分けられるかを確かめる「外部検証」は、まだ行われていません。

2. 比べた相手は、どんな人か

先ほどのとおり、対象はいびきで受診した人だけで、一つの施設の中国人の集団です。いびきなどの症状がない一般の人の中から無呼吸の人を見つける「ふるい分け」に使えるかは、分かっていません。

3. 原因なのか、結果なのか

この研究は、その時点の状態を比べた観察研究です。sLRP-1が低いことが無呼吸の原因なのか、無呼吸の結果として低くなるのかは分かりません。測っていないほかの要因が関係を見かけ上つくっている可能性(残余交絡)も、著者自身が限界として挙げています。

論文の本文にはsLRP-1を「保護因子(protective factor)」とする表現もありますが、この研究の方法では、守る働きや因果関係までは示せません。ですので、「血液検査でPSGの代わりになる」「sLRP-1を上げれば無呼吸が良くなる」とは言えません。

4. 数値は、同じ測り方の値どうしで比べているか

この研究のsLRP-1の値は、ELISAで測ったものです。ELISAは、使う測定キット(測定系)が違うと、同じ物質でも出てくる値がそろうとは限りません。ニュースで「〇〇 pg/mLより低いと注意」のような数字を見かけても、別の研究や別の測定方法で出た値と、数字だけを並べて比べないようにしてください。

今の位置づけは、探索的な「バイオマーカー候補」(病気の有無の目印になるかもしれない血液などの値)です。今後必要とされているのは、複数の施設での外部検証、一般の人での検証、同じ人を時間を追って調べる縦断研究、別のELISAの測定系での再現です。

いびきや無呼吸が気になるとき、今の時点でできること

この研究でも、OSAがあるかどうかの判定そのものはPSGで行われています。ここから先は、この研究の結果ではなく、睡眠時無呼吸の検査についての一般的な情報です。

受診を考える目安

  • 家族から、寝ているときに息が止まっているようだと言われた
  • 大きないびきを、くり返し指摘される
  • 日中に強い眠気がある(会議中や運転中などに眠くなる)

相談先の診療科

呼吸器内科、睡眠外来(睡眠を専門にするクリニック)、耳鼻咽喉科などが相談の窓口になります。受診の前に、医療機関のサイトや電話で「睡眠時無呼吸の検査をしているか」を確かめておくと迷いません。

一般的な検査の流れ

  1. 自宅でできる簡易検査:機器を借りて、自宅で眠りながら呼吸や血液中の酸素の状態を記録します。
  2. 必要ならPSG:簡易検査の結果などから必要と判断されたときに、医療機関に1泊してPSGを受けます。

まず始めること

  1. 指摘された内容と日中の眠気をメモしておく:いつ、どんな様子だったか(いびきの大きさ、息が止まっていた感じなど)を言われた言葉のまま残し、日中に強い眠気が出た場面も書いておきます。受診したときに状況を具体的に伝えられます。
  2. 上の診療科で睡眠の検査について相談する:新しい血液の指標が使えるようになるのを待つより、今ある検査で自分の状態を確かめることを先にしてください。

そして、これから「血液で無呼吸が分かる」といったニュースを見かけたときは、上の4つの確認点(同じ人の中での成績か・比べた相手は誰か・原因か結果か・同じ測り方の値どうしか)に当てはめてみてください。研究が一歩進んだのか、まだ候補の段階なのかを、自分で見分けやすくなります。

出典:Sun Z ほか(2026)「Inverse association between serum sLRP-1 levels and obstructive sleep apnea in snoring individuals: a case-control study based on polysomnography and machine learning models」Sleep and Breathing 30, 249. DOI: 10.1007/s11325-026-03761-5.

検査の一般案内:国立循環器病研究センター「睡眠生理検査(簡易睡眠検査、PSG検査)」

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。感じ方には個人差があります。