「運動しましょう」と言われた後どうする?医療者が運動を勧めにくい理由を18のレビューから読む

健康診断や通院のときに「もう少し運動しましょう」と言われた。でも、何を、どのくらい、どこでやればいいのかまでは聞けないまま帰ってきた。そんな経験はありませんか。

実は、勧める側の医療従事者にも、運動の話をしにくくしている事情があります。それを18本のレビューから整理した研究が、BMC Public Health という査読のある学術誌に掲載されました。

研究が挙げた「勧めにくい理由」は、裏返すと、運動を始めて続けるために自分の側で用意しておけるものの一覧としても読めます。

18本のレビューを、さらにまとめ直した研究

この研究は「アンブレラレビュー」という方法で行われています。ある問いについて複数の研究をまとめたもの(システマティックレビュー)を、さらに集めて整理する方法で、「レビューのレビュー」とも呼ばれます。

研究チームは、PubMed、Web of Science、Scopus、PsycINFO、CINAHL という医学・看護・心理学などの論文データベースを検索し、最終的に18本のレビューを採用しました。18本の中には、数字で比べた研究(量的研究)、インタビューなどで考えや経験を聞き取った研究(質的研究)、その両方を組み合わせた研究が含まれています。

研究計画は、PROSPERO という仕組みに事前登録されています。調べる前に「何をどう調べるか」を公開しておくことで、結果を見てから方法を都合よく変えることを防ぐための仕組みです。資金提供はなく、利益相反(研究の結果によって得をする企業などとの利害関係)もないと記載されています。

調べたのは「医療従事者が患者に運動を勧める」という行動です。運動そのものが体にどう良いかを調べた研究ではありません。

勧めやすくする要因は83、妨げる要因は90。中心は「知識・環境・周りの人」

18本のレビューから、運動を勧めやすくする要因として83のテーマ、妨げる要因として90のテーマが取り出されました。その中で主なものとして挙げられたのが、次の3つずつです。

勧めやすくする主な要因

  • 社会的影響:同僚や職場、患者など、周りの人から受ける影響
  • 知識:運動について、何をどこまで知っているか
  • 職業的役割・アイデンティティ:運動の話をすることを、自分の仕事の一部と考えているかどうか

妨げる主な要因

  • 知識
  • 環境・資源:時間・場所・人手・資料など、行動するための条件
  • 社会的影響

「知識」と「社会的影響」は、勧めやすくする側にも妨げる側にも出てきます。これは矛盾ではなく、テーマを取り出して整理した結果です。そのため「知識さえあれば勧められる」とまとめてしまうと、この研究の読み方としては正しくありません。

研究では、こうした要因に働きかける手段として、教育、研修、環境の整備、ガイドラインや規制などが整理されています。

この研究から言えないこと

  • どの対策を取り入れれば、患者の運動量や健康状態がどれだけ変わるのかは、この研究では分かっていません。
  • 複数の研究の効果の大きさを数字で合算する「メタ解析」ではないため、「何%増えた」「統計的に有意だった」といった1つの数字はありません。
  • 18本のレビューに含まれる参加者の総数は分かっていません。
  • 公開されている論文ページでは、著者が研究の限界をまとめた独立した節は確認できませんでした。
  • 対象は医療従事者です。ここで挙がった要因が、そのまま一般の人が運動を続けられない理由だというわけではありません。

診察室で話が短くなるなら、続ける準備は自分の側で用意する

ここからは研究の結果そのものではなく、それを生活の側に置き換えた読み方です。

医療者が運動を勧めるときの壁として挙がった「知識」「環境・資源」「社会的影響(周りの人)」は、受け取る側の生活に置き換えると、「何を・どのくらい」「いつ・どこで」「誰と」になります。たとえば、次のような場面です(研究で調べた内容ではなく、生活の側の例です)。

  • 知識(何を・どのくらい):「歩いた方がいい」とは言われたが、膝が気になっていて、どのくらいまで歩いてよいのか分からない
  • 環境・資源(いつ・どこで):やる気はあるのに、平日は時間が決まらず、雨の日はやる場所がない
  • 社会的影響(誰と・誰に話すか):家族に「無理しないで」と言われて止まる。逆に、一緒に歩く人がいる日は出かけやすい

この3つを自分で決めておけば、診察室での話が短くても、その先を自分で組み立てる材料になります。

知識:受診のときに、この3つを聞いておく

「運動しましょう」の一言で話が終わりそうなら、こちらから聞いてみてください。

  1. 今の自分の状態で、避けた方がいい運動はあるか
  2. 強さの目安はどのくらいか(聞き方の例:「1回に何分くらい、どのくらい息が上がるところまでなら大丈夫ですか」)
  3. 相談できる運動施設や専門職(理学療法士など)はあるか

答えは、その場で手帳やスマートフォンに1行で残しておきます。例:「膝:坂道は避ける/強さ:(言われた1回の時間・息の上がり方)/相談先:病院のリハビリ外来」。言われたことをそのまま書いておけば、あとで自分の目安として見返せます。

環境・資源:「いつ」と「どこで」を先に決める

「環境・資源」は、勧める側にとっての主な壁の1つとして挙がっていたものです。受け取る側の生活に置き換えると、「いつ・どこで」が決まっていないままでは、始める日もはっきりしません。

  • いつ:帰宅して着替える前、夕食の片付けの後など、毎日同じ順番で起きることの直後に置く。雨の日用の「いつ」も1つ決めておく
  • どこで:近所の道、通勤の途中、雨の日は家の中など、準備なしで始められる場所を晴れの日用と雨の日用で1つずつ
  • 何を:受診で聞いた目安の範囲で、まず1つだけ

周りの人:誰とやるか、誰に話しておくか

研究では、周りの人からの影響(社会的影響)が、勧める側の後押しにも妨げにもなっていました。受け取る側では、一緒に歩く家族や友人、やると決めたことを話しておく相手など、周りの人をどう置くかを自分で選べます。止められやすい相手には、受診で聞いた目安を先に伝えておく、という置き方もあります。

記録して、次の受診で見せる

いつ・どこで・何をしたかを、手帳やスマートフォンに1行で残しておきます。

  • やった日の例:「火曜/帰宅後・近所の道/歩く15分/少し息が上がった」
  • やらなかった日の例:「木曜/雨で中止/家の中の分を決めていなかった」

止まった日の理由も書いておくと、次の受診で「これくらい続けています」「ここで止まりました」と具体的に伝えられ、相談の続きにしやすくなります。

まずは、次の受診の前に、上の3つの質問のうち聞きたいものを1つメモしておくところから始めてみてください。

出典:BMC Public Health 掲載の原著論文(査読済み・早期公開版)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果・効能を保証するものではありません。感じ方には個人差があります。